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エッセイ どう書き始めるのか

どう書き始めるのか

 謎か目的か。小説とは、そのどちらかで引っ張るものだ。
 どこかでそんな言葉を聞いた覚えがある。おそらく教則本の中に書かれてあったのだろう。小説の書き方についての本である。参考になればと、何冊か目を通した中で、その言葉が一番印象に残っている。
 謎か目的か。確かにその通り。改めてそう感じる。
 映画は、観客の意志に関係なく、一度スタートしてしまえば、後は自動的にストーリーは進み、やがては自動的に終わりを迎える。テレビドラマも同様だ。その場を立ち去る。テレビの電源を切る。ドラマの放映をしているテレビ局を襲撃する。などといった積極的な行動を取らない限り、ストーリーはやはり勝手に進み勝手に終わる。当たり前の話である。
 一方、そう簡単にいってくれないのが小説だ。物語は決して自動的に進んではくれない。読者が次のページをめくることで、その物語は初めて動き出すのである。
 謎と目的は、読者に次のページをめくらせるための、いわば原動力と言っていい。
 例えば恋愛小説。
 ある人物に恋をしてしまった主人公。この設定の場合、二人が両想いの関係になる、というのが“目的”となる。そして、主人公の思いは届くのか、それとも失恋で終わるのか、という興味をうまく読者に抱かせることができれば、ページは無事最後までめくり続けられることになるだろう。
 例えばミステリー小説。
 ある殺人事件を捜査することになった主人公。この設定の場合、事件の真相を突きとめる、というのが“目的”となる。そして、犯人は誰なのか、犯行の動機や手口は、という興味をうまく読者に抱かせることができれば、やはりページは無事最後までめくり続けられることになるはずだ。
 書き手の立場として、“謎”の扱い方は難しい。読者に次のページをめくらせるための、もう一つの要素のことである。
 あの人は何者? なぜそんな発言を? ああいう態度を取った理由は? そこはどこ? 目撃したものとは?
 物語に仕組まれた“謎”が効果を発揮した時、読者はこういった感想を抱き、そしてその疑問を解決したいと考えるようになる。クイズを出されれば、その答えを知りたくなる、という心理とよく似ている。
 疑問や違和感を抱かせるというのは、それほど難しいことではない。事実をどの程度明らかにし、どの程度隠すのか。その加減こそが、“謎”という手法の難しさなのだ。
 膨大な数の疑問。いつまでも晴れることのない違和感。加減を間違えると、それらは単なるストレスでしかなくなる。ページをめくった先には、必ずその答えが書かれていますよ。というのにもやはり限界はあるのだ。
 小説の執筆をしていて、特に神経を使うのが、その物語の書き始めの部分。
 謎か目的かということで言うと、『不倫のライセンス』では、第一章から、主人公の“目的”というものをはっきり示した。『雨と虹の日々』では、“謎”の要素を前面に打ち出す形でのスタートとした。
 このお話の先をぜひ知りたい、と読者に思わせるのが、作者としての願い、あるいは狙い、あるいは企みである。
 そういえば、ミステリー小説の書き方として、「まず死体を転がせ」という有名な言葉があることを思い出した。ただし、これもあまりにパターン化してしまうと、読者に次のページをめくらせる力も弱まっていくことだろう。殺人犯の計画がうまくいっても、作者の計画としては大失敗なのである。
 ある朝、グレゴール・ザムザが気がかりな夢から目ざめたとき、自分がベッドの上で一匹の巨大な毒虫に変ってしまっているのに気づいた。
 カフカ作『変身』の有名な冒頭部分である。
 うーん。物語の書き出しとして、これは本当にすごい。発表から数十年経とうと、そのインパクトはまったく色あせない。これを目にして、次のページに興味を抱かない者がいるだろうか。
 この作品のように、書き始めの数行で、読者の興味を引くことができれば、それはもう理想的なスタートと言っていい。そのためには、できるだけ気になる言葉というものを頭に持っていきたい。逆に、単なる説明文。例えば、その場所がどういうところで、どういったものが見えるのか。登場人物の細かな外見、といった書き出しはなるべく避けたいところだ。本筋に入る前に、本が閉じられてしまう。作家にとってこれほど悲しいことはないのだから。

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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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No title

物語の書き出しって、大事ですよね。
私は書店で本を選ぶとき、あらすじよりも書き出しの数ページを読みます。
そこで自分に合う、合わない、が大体わかります。
冒頭の文章でひきつけられたものって、たいてい最後まで面白いのです。
そこに、『読者を楽しませよう』というエンターテイメント性が感じられるから。
著名な作者でも、その冒頭が自分に合わないなと思ったら、手を出しません^^;

最後の方まで読んだら面白くなるから、と勧められても、やはりそのページごとに魅力的でないと、大事な時間を使うのが惜しくなります。
私がわがままな読者なので(笑)

この多忙な現代人に、最後まで読ませようと思ったら、作家さんは相当な努力を必要とされるのでしょうね。
今はこんなにたくさんの娯楽が溢れている時代ですから。
でも小説には、映像に代えがたいドラマが溢れています。ぜったいに無くならないでほしいな。
そんな気持ちで日々、素敵な書籍を探しています^^

Re: No title

limeさん、コメントありがとうございます。

> 著名な作者でも、その冒頭が自分に合わないなと思ったら、手を出しません^^;

私の場合、なぜか途中でやめるということができず、チラリとでも冒頭を読んでしまうと、どんなにつまらなくても、最後まで読まなきゃいけないと思ってしまうんですよね。
責任のような、使命感のような、そんな感覚があるんです。本当はやめたいんですよ。でもそれができないんです(涙)
そして、そういう作品は、たいてい最後まで読んでもつまらないまま終わるんです。
うーん。この性格、どうにかならないかなあ。

> この多忙な現代人に、最後まで読ませようと思ったら、作家さんは相当な努力を必要とされるのでしょうね。
> 今はこんなにたくさんの娯楽が溢れている時代ですから。

そうですね。
本文中でも触れましたが、小説を読んでもらうには、読者の積極的な行動が不可欠です。
それを考えると、他の娯楽よりも、難しい立場と言えるかもしれません。
実際、年々小説の売り上げは落ちているようですからね。プロ作家は大変だと思います。

> でも小説には、映像に代えがたいドラマが溢れています。ぜったいに無くならないでほしいな。

小説にしかできない表現というものがありますから、なくなることはないんだと思います。そう信じたい。
何かのきっかけで、小説の魅力が、再び見直される時期が、きっとくるんじゃないかなあ。うん、そう信じたい。

No title

ブログで言うなら、一話が一ページのようなもので、
次話に行ってもらえるかどうかでしょうか。

読んでいただけることをありがたいと思うと共に、
読み進めていただけるよう、日々精進です。

書き出し、注目ですよね。
ここで好きか好きじゃないかがかなり決まると思います。
第一印象って、やっぱり大事だと思います。
読んでいただく方としても、頑張るのですが、なかなか・・・(-_-;)

ここをクリアしたら次は何でしょうね。
人それぞれ違うと思うので、あとは読者様にお任せです。

ブログ小説の場合は、一話の中にも起承転結があって、
それらが積み重なって大きな構成を成す場合もあるように思います。

未熟ながらも、一話一話を書き出しから大切に描いて、
アップしていきたいなあと思っています。
それでこれ? なんですけどね(><) 
汗・汗・・・(-_-;)

Re: No title

けいさん、コメントありがとうございます。

> ブログで言うなら、一話が一ページのようなもので、
> 次話に行ってもらえるかどうかでしょうか。

そうですね。
それから、ネット小説の場合、途中から読まれるということも多いでしょうね。
最終回を先に読まれることだけは避けたいところです。

> 読んでいただけることをありがたいと思うと共に、
> 読み進めていただけるよう、日々精進です。

考え方によっては、すごく鍛えられる発表手段かもしれませんね。
ただで読めるものは、抵抗なく途中でやめられますから。

> 書き出し、注目ですよね。
> ここで好きか好きじゃないかがかなり決まると思います。
> 第一印象って、やっぱり大事だと思います。

書き出し、そして第一話には、いつも苦労してます。
意識しているのは、本文中でも触れたように、“目的と謎”です。
あとは、魅力的なキャラクター表現でしょうか。
あとは、ただ祈るのみです。
どうか、最終回から読まないで、と。

どうか、最終回から読まないで

↑笑いました。
すみません、実は朱鷺はそういう生き物です。
特に、プロの作家さんの本は、解説から入ったり、あとがきから入ったり。あるいは、最初と最後だけ読んで、終わり方に納得したら、途中をしっかり読んでみたり。
他、好きな作家さんは、どんな作品だろうと、必ず最初から最後まで読みます。

そして、朱鷺は、物語(作品)は、作家の手を離れた瞬間、読者のものと思うので、こういう読み方をして欲しいとか、誤解しないで欲しいとか、まったくありません。
あり得ないけど、勝手に映画化されても漫画化されても、そして、内容が変わってしまっても、しょーじき、どうでも良いのです。
受け取った方が好きなように楽しんでください、と思います。
愛情がない、という訳ではなくって、むしろ、すべての幸せを祈る、という投げやりさ加減であろうか。

謎か目的か。
うーん…。
どうしよう、何にも考えていない(^^;
朱鷺にとって「書くこと」は呼吸をするが如く、生きるために必要なことであって、それ以上でもそれ以下でもないんだな、きっと…。

「アニマ」にご感想、ありがとうございました♪
また、お邪魔いたします(^^)

Re: どうか、最終回から読まないで

朱鷺さん、コメントありがとうございます。

> 特に、プロの作家さんの本は、解説から入ったり、あとがきから入ったり。あるいは、最初と最後だけ読んで、終わり方に納得したら、途中をしっかり読んでみたり。

うーん。作家泣かせの読者だなあ。
あ、でも、ちゃんと途中も読むんですね。
これって、どういう心理が働いてるんだろう。不思議だなあ。
確かに、結末がわかった上で、読むという楽しみ方もあります。二度読みする時などは、そういう楽しみもありますね。
結末がわからない状態で読み進めるのが、ストレスにでも感じるんでしょうか。
うーん。やっぱり不思議。
まあ、朱鷺さんのことは、以前から不思議な人だと思ってましたけど(笑)もちろんいい意味でですよ。

> 他、好きな作家さんは、どんな作品だろうと、必ず最初から最後まで読みます。

これは私もそうです。
途中でやめちゃいけないっていう、義務感のようなものがあって、我慢しながら読むこともよくあります。

もしも、自分の作品が映画になったら。
これ、よく考えます。
実際に映画化され、自分のイメージと違っていたら、私なら、やっぱり文句を言ってしまいそうだなあ。
そういえば、映画版『シャイニング』に対するスティーヴン・キングの、批判振りを思い出しました。何十年も経っているというのに、いまだに腹立ちが収まっていないようなんですよね。私も、そうなってしまうかも(苦笑)

> 謎か目的か。
> うーん…。
> どうしよう、何にも考えていない(^^;

謎か目的か。という話は、あくまでも娯楽小説でのことですけどね。
純文学系の作家などは、どちらも意識していない、いや、むしろ、そういったことを考えること自体が悪い。そう思ってる人もいるはずです。
まあ、いいんですよ、それで。
いろんな考えの作家がいる、それこそが重要なんです。

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Re: No title

鍵コメGさん、コメントありがとうございます。

> 赤川次郎の、あの角を曲がって。
> もしかしたら、それは、辛かったけど頑張って読み終えた方かも知れません。
> ごめんなさい。
> 思い出すのも辛い本です。

へえ、そんなに辛い小説があったとは……。
逆に興味が出てきてしまった(笑)

ここは、もっとああした方がいい。
この辺りは、きっとこうすればよかったのに。
出だしはこうして……。オチはああして……。

つまらない小説を楽しむには、上記のようなことを考えながら読むといいですよ。
これによって、いいアイデアがひらめいたりすることもよくあります。

> カフカ作『変身』
> 懐かしいです。

この作品、ご存知だったんですね。
このヘンテコな世界観、今読んでもすごく新鮮に感じます。
歴史的な評価を乗り越え、長く読み続けられている作品は、やはりパワーがあります。

私の大好きな小説の一つ、サガンの『悲しみよこんにちは』
新しい日本語訳が出ていたので、久しぶりに読んでみました。
やはりこれも素晴らしかったです。
実をいうと、『不倫のライセンス』の主人公の名前は、この作品からもらったものなんですよね。
内容は、悲しみよさようなら、になりましたけど(笑)

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Re: No title

鍵コメGさん、コメントありがとうございます。

> サガンもあります。
> 読み返してみます。

ぜひぜひ。
あれも名作ですよね。
サガンが十台の頃に書いた作品だとか。恐るべき才能。
でも、そのデビュー作が最高傑作になってしまったというのは、ある意味悲劇かも。

私なんかより、Gさんの方が、よっぽど多くの小説を読んでいるみたいですね。
何かおすすめがあったら、今度いくつか教えてください。

プロフィール

片瀬みこと

Author:片瀬みこと
札幌在住のアマチュア作家

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